なぜ今「光ファイバー温度センサ」が注目されているのか
─ 高温・ノイズ環境での非接触測定ニーズと用途の広がり ─

製造現場やエネルギー設備、輸送機器など、過酷な環境下での温度管理がますます重要になってきています。中でも、高温領域での安定した温度測定や、強い電磁ノイズが飛び交う環境での誤差の少ない計測が求められる場面が増えたことで、「光ファイバー温度センサ」が再注目されている状況があります。

光ファイバー温度センサは、その構造上、電気的ノイズの影響をほとんど受けず、金属を使わずにセンサ部を構成できるため、以下のような用途に適しています。

　・高電圧部位の絶縁が必要な環境
　・モータやインバータ周辺などのノイズが多い設備内
　・医療・半導体製造など高精度かつ非接触測定が必要な工程

また、従来の熱電対やサーミスタでは対応が難しかった測定点の小型化・高密度化も可能なため、制御精度の向上や予知保全の高度化に貢献できる技術として導入が進んでいます。
とはいえ、次章で紹介するように、導入コストや運用面の課題もあり、“誰にとっても理想的な選択肢”とは言えないのが実情です。

2. 光ファイバー温度センサの課題
─ 高コスト・設置の難しさ・取り扱いリスクといった運用面の障壁 ─

高温環境やノイズ環境下でも安定して動作する光ファイバー温度センサは、技術的には非常に優れた選択肢です。ただ、実際に導入・運用する現場の立場に立つと、いくつかのハードルが存在します。

● 初期費用が高い
光ファイバー温度センサは、センサ本体だけでなく、専用の信号変換器や高精度なデータ処理ユニットが必要になります。そのため、1点当たりの単価が高く、複数点の温度を同時にモニタリングしたい場合はコストが急増します。

● 現場実装の手間が大きい
光ファイバーは繊細で曲げ半径にも制限があり、配線の取り回しや保護が必要になります。物理的ストレスや現場での施工ミスによる断線リスクも高く、設置性・保守性の面で難しさが残ります。

● 実装後の運用が限定的になることも
一度導入すると、システム全体の変更が難しいため、「追加の測定点を後から増やしたい」「センサの設置位置を見直したい」といった柔軟な対応が効きにくい側面もあります。また、予備品の確保やサポート体制の整備も必要になります。

現場では、「性能的には理想だが、運用・価格面で折り合いがつかない」という理由で導入が見送られるケースが少なくありません。
こうした背景から、次章では「光ファイバーセンサの代わりに使える低コストかつ高性能な代替技術」について整理していきます。

代替技術としての選択肢とは？
─ 安価・堅牢・高感度な温度測定技術を再整理 ─

光ファイバー温度センサが持つ「高精度・高耐環境性」といった性能は魅力的です。ただ、あらゆる現場でそれが必要かといえば、必ずしもそうではありません。むしろ、コスト・設置性・耐久性のバランスを見て、“十分に現実的な性能”を持ったセンサを選ぶ方が、結果的にプロジェクト全体の最適解になるケースも多くあります。

ここでは、光ファイバーの代替として現場で選ばれている温度センシング技術をいくつか整理しておきます。

● サーミスタ・サーモセンサ
もっとも一般的でコストパフォーマンスが高い温度検出素子。応答性に優れ、小型で省スペース設計が可能な点が特長です。中でも、高耐熱仕様や耐振動性を備えたサーモセンサであれば、比較的厳しい環境でも使用可能です。

● 熱電対（K熱電対など）
高温域での計測に適しており、部材選定と周辺設計によっては700℃を超えるような領域でも使用可能です。コストも比較的抑えられるため、耐ノイズ対策や補償導線の工夫と合わせて実用的な代替になります。

● 赤外線式（非接触）温度センサ
センサを対象物に直接触れずに温度を検出する方式。動く対象や衛生環境が厳しい現場に使われますが、設置角度や放射率補正の設計が必要で、場合によっては構造が複雑になる点に注意が必要です。

これらの中でも特に注目されているのが、高温・ノイズ環境下でも耐性を持ち、なおかつ導入ハードルが低い“サーモセンサ”の分野です。
次章では「サンサーモ」を紹介します。

光ファイバー温度センサの代替候補として、サンサーモ（SAN-Thermo）が現場で高く評価される理由は、その「実用性」と「導入コストの低さ」にあります。ここでは、特に重要視される3つのポイント――「高温対応」「ノイズ耐性」「設置性」から、その比較優位性を整理してみます。

● 高温対応：125℃までの温度域に対応
サンサーモは、標準仕様で-40℃〜+105℃の測定範囲をカバーしていますが、材料の変更によって最大125℃まで対応が可能です。
この温度域は、多くの産業設備や車載用途、屋外インフラ監視などに必要とされるレベルであり、過剰性能になりがちな光ファイバーよりも、コストと性能のバランスが取れています。

● ノイズ耐性：長距離でも安定したデジタル伝送
測定信号はアナログではなく、電圧変動をデジタル信号に変換してPCへ送信されます。
これにより、電磁ノイズが多い工場内やインバータ近傍などでも、信号の劣化を最小限に抑えられます。加えて、最大300mの長距離伝送でも安定動作を実現しており、干渉リスクを嫌う現場にとっては有力な選択肢です。

● 設置性：中間装置・中間電源が一切不要
最大40ポイントまでのセンサを直径5mmの細径ケーブル1本で多点実装でき、分岐や配線の複雑さが発生しません。
また、中間に変換器や電源を挟む必要がなく、USBからの電源供給のみで完結する構造になっているため、工事や現場設計の工数を大幅に削減できます。

● 実装の柔軟性：曲げやすく、視覚的にもスマート
直径5mmという細さにより、曲げ配線や狭小スペースへの敷設も容易です。加えて、1本の黒ケーブルで測定点が完結することで、設置後の美観やメンテナンス性も高いという声があります。